初期の皮膚腫瘍を発見しやすい人は、飼い主さんやトリマーです。また、定期的な獣医師による健康診断は、小さな皮膚腫瘍でも発見できる確率が高くなります。 腫瘍は小さい時ほど、完治ができる可能性が高くなります。
腫瘍の発見のコツ
家で発見できる腫瘍は、皮膚腫瘍と乳腺腫瘍です。毛の流れが異なる箇所や、毛を舐めて唾液で濡れている場所をチェックしましょう。
早期で見つけにくい場所は、口内とお腹の中にできる腫瘍です。口内は歯磨きの習慣があれば、家で早期に発見しやすいです。また、唾液による下顎の毛の汚れも手がかりになります。
腹腔内腫瘍を早期に見つけるには、超音波検査が必要になります。中高齢の犬猫は、獣医師による定期検査で、腹部超音波検査をしてもらうと良いでしょう。
院内で行う腫瘍検査
体の中の腫瘍は、レントゲン検査や、超音波検査で発見します。通常の診察では、口の中や、リンパ節をチェックします。
腫瘍検査には、細胞診と病理検査があります。
細胞診は、腫瘍に針を刺して少数の細胞を採取して染色し、顕微鏡で確認する検査です。病理検査は、局所麻酔または、全身麻酔を行って、腫瘍を塊で切除して行う検査です。切除した組織を検査センターに送って検査します。検査による侵襲性が高いのですが、腫瘍の原因が正確にわかります。
検査結果は、約10日後にわかります。結果が良性腫瘍ならば抜糸で治療が終了です。悪性腫瘍の場合は、追加の治療が必要になる場合があります。
腫瘍の治療
適切な検査を行って腫瘍の種類を特定することで、最適な治療法が選択できます。腫瘍の種類や発生した場所や進行度によって、適切な治療法は異なります。例えば、リンパ腫では抗がん剤が効果的です。扁平上皮癌では外科手術が適切です。進行癌や喉の奥に発生した腫瘍の場合では、放射線が適切な治療になります。
完治が目指せるのか?治療目的を決めます。
ガンの進行度によって、治療目的が変わってきます。初期ガンなら、完治を目的とした治療を行います。進行ガンや末期ガンは、生活の質を上げることや痛みを取る目的の治療になります。
手術
手術は、体に侵襲性のある治療法です。全身麻酔を行い腫瘍を外科的に取り除く治療です。扁平上皮癌や肥満細胞腫、腹腔内の腺癌などの治療では手術が選択されます。
乳腺腫瘍
犬猫の乳腺腫瘍は大きいほど転移の確率が上がります。1cm以下で発見して手術するのが良いです。若い時に避妊手術をすることで乳腺腫瘍になる確率は低くなります。
口腔内腫瘍
口腔内の悪性腫瘍で、腫瘍を切除する場合は、顎骨ごと切除することが多いです。左下顎骨の片側全切除を行なっています。下顎骨切除は、顔の変化が目立ちません。
足の腫瘍
手足にできた悪性腫瘍は、断脚が選択肢になることがあります。犬猫は3本足でも生活に支障が出ることは、ほとんどありません。
抗がん剤
抗がん剤が第一選択になる代表的なガンは、リンパ腫です。抗がん剤は、飲み薬や注射薬があります。複数の抗がん剤を組みあわえて投与するのが一般的です。通院できる頻度、費用、副作用、効果の予測を相談しながら、抗がん剤の投与プログラムを決定します。
手術後の抗がん剤の治療
手術後の病理検査で、ガンの悪性度が高い場合や、転移の兆候が見られる場合は、抜糸が終了したタイミングで抗がん剤を使用します。主に、アドリアマイシンやカルボプラチンを使用します。
放射線
切除不能な進行ガンや、脳腫瘍などで放射線療法を選択します。全身麻酔を行い、ガンに放射線を照射する治療法です。主に、東京大学、麻布大学、日本大学などの付属の動物病院を紹介しています。
放射線療法の副作用は、照射部位の脱毛が起きたり、被毛の色が変化することがあります。最近では、新しいメガボルテージの放射線の機械を導入している大学が増えており、放射線治療による副作用とリスクが減少しています。
その他のガン治療
細胞免疫療法があります。メラノーマなどの一部のガンに対して治療が行われます。ただし、治療効果は限定的です。
食事療法
リンパ腫や進行癌では、食事のエレルギー代謝が変わります。炭水化物はガンの栄養になりやすく、脂肪が体の栄養になりやすくなります。がんを患った犬猫には、旬の青魚をお勧めしています。